ハワイ島コナコーヒーを巡る旅 97年度カッピングコンテストチャンピオン農園 「ダカイン」 の自然派コーヒーに大いに共感する!
ええ、そんなに?とはいってももちろん、みんなが大規模農園ではなく、大中小入り交じっている。経営形態も様々で、自分のブランドで売るところもあ るし、全部卸売りしてしまうところだってある。ヤスさんは、それだけ有象無象あるコナコーヒーの世界にズポッとはまってしまい、自分の車で曲がりくねった 山道を走り、自分の豆を売りたいと願い、技術をもってよい豆を生産する農家と出会ってきた。その中でも、実力のある人たちのところへ連れて行ってくれると いうのだ。
その一軒目が農場「DAKINE(ダカイン)」だ。
小高い山の上、黄色い看板。ここは、もともと地質学者だったテリー・フィッツジェラルドさんが住み着いて、コーヒー農園を営んでいる農場だ。ヤスさんにとってのコナコーヒーの人生が始まった、記念すべき農場だそうだ。
「あのですね、テリーはなんというか、とっても自然体な人です。ヒッピーみたいな感じなんだけど、、、でも、彼の作るコーヒーは本当に個性的で、美味しいんです。」
という解説を聞きながら、僕は初めてといってよい、コーヒーの樹との対面を迎えていた。
熱 帯植物であるコーヒーの樹にこうやってきちんと向き合うのは初めてのことだ。中学生の頃、プロレス・スーパースター列伝という漫画に夢中だったのだが、そ の中でアントニオ猪木が、故郷のブラジルでコーヒー豆の収穫をする過酷な労働をしていたというエピソードがあったが、コーヒーのことを考えるといつもあれ が思い浮かんでしまう(苦笑)
テリーの自宅は巨大なツリーハウス兼工場という感じで、周りの環境に完全に溶け込んでいた。
ここに、ご夫婦と息子さんで暮らしている。奥さんは中国の方だそうで、テリーがアジアで農業指導をしている時に知り合ったそうだ。年の差じつに30歳程度?
それにしても、テリー・フェッツジェラルド氏の魅力的なたたずまいといったら、なかった!
顔を見ればもうわかるだろう、気さくで、壁のない人物なのだ。ヤスさんは家族のように迎えられていた。
「まあ、コーヒー飲みなよ」
と煎れてくれたダカインのミディアムローストコーヒー。
これが、最初にして最良の一杯となった! なんとすっきりしていて、しかもパワーのある味!酸味はそれほど強くないが、強い個性を感じる味だ。 じつに旨い。
「自由に工程をみてよ。僕の息子が見せたいっていってるから」
と、テリーの愛息子がエヘンと胸を張りながら、案内してくれた。
ちなみに村岡さんはすでにダカインに来たことがあるので、おなじみだ。
農場内には千本以上のコーヒーが植えられていて、収穫は家族と雇用労働者で行う。
この赤く熟したのがコーヒー豆だ。この甘い果汁をもつ実を噛んでみると、、、
中から、コーヒー豆の本体が現れる。
この時点では、コーヒー豆には味はない。焙煎することでしか風味は生まれてこないわけで、どんな経緯でコーヒーが人類に「発見」されたのか、非常に興味深い。
赤くなった実から、収穫が始まる。コーヒー豆の収穫は機械化されているケースも多いが、ここでは手摘みだ。
プロの手つきは実に早くて、熟したものだけズバッズバッと収穫していく。
こうして収穫された実から、コーヒー豆の部分を取り出すことを精製というそうだ。
この機械に投入すると、実と豆が分離されて出てくる。脱穀機のような感じだな。本当は、この精製の方式には三種類あって、ナチュラルとかウォッシュとかいうのだけれど、ダカインがどの方法をとっているのか忘れてしまった。失礼。あとで確認できたら書き直します。
下の写真が、実のまわりの部分が排出されたところ。これは有機物として農園の土に戻される。
分離された豆は天日乾燥。
「いやぁ、豆がデカイよねぇ」
と感心している村岡さん。通常の農園よりも粒が大きいということらしい。
と ころで、通常のコーヒーの実には、下の写真の右側のように二つに分かれた豆が内包されている。しかし、生育の段階でなんらかの作用があったとき、左側のよ うに一つにくっついた状態の豆ができる。これをピーベリーと呼ぶそうだ。独特の風味のコーヒーができて、珍重されているという。
コーヒー乾燥スペースは、彼の格好の遊び場となっているらしい(笑)
再び戻り、テリーさんの話をいろいろ聴く。いま彼らが取り組もうとしているのは、自前で焙煎をして販売すること。現時点では、ローストは外部に委託している。奥さんがしきりに「日本メーカーの焙煎機はいくらくらいなの?」という質問をヤスさんにしていた。
やはり自分らの思うようなローストができる環境を持ちたいというのは、自然なことなのだろう。
それにしても旨いコーヒーだった、、、
お礼を言って、ここを去ろうとするのだけれども、なぜか息子クンがうちの嫁さんを気に入ってしまったらしく、足にかじりついて離れない。
お父さんに押さえられる(笑) 遊び相手いないのかなぁ、と不憫に思ってたら、うちの嫁さんが 「ううん、すっごくいっぱい友達いるみたいだよ。学校行ってるっていってたし」とのこと(笑)
そ れにしても、ここダカインの農場の雰囲気とコーヒーの味にはびっくりした。端的に言えば好みのコーヒーだ。インパクトが強いわけではなく、「ずーっと飲み 続けられる味」。それはもちろん、テリーがおくびにも出さない、生産技術の追求の果てにたどりついたものなのだと思う。
「さて、それでは次に2010年のカッピングコンテスト優勝者の農園にいきますよ!」
ヤスさんの声がかかる。コナコーヒーの旅は始まったばかりだ。
■撮影データ
カメラボディ: ニコンD700
レンズ: タムロン 28-75mmF2.8